インディーズ作家よ、集え!

2013年10月31日
posted by 鷹野 凌

日本独立作家同盟を設立したわけ

日本独立作家同盟」とは、私が呼びかけ人となって発足した、自己出版(self-publishing‎)をする個人作家の同盟です。「マガジン航」に掲載された「ロンドン・ブックフェア2013報告」の記事を読み、既存の出版社に頼らず作家同士が助け合いながら本を世に出していく「Alliance of Independent Authors」という組織の存在を知り、日本にもこういう同盟があったらいいな、と思ったのです。

「同盟(Alliance)」という言葉には、異なる立場の人々がグループを作って、相互に協力し合うというニュアンスがあります。つまり、この同盟はカッチリとした組織を志向しているわけではなく、「来る者は拒まず、去る者は追わず」の緩やかな共同体を目指しています。

既存の出版社や取次・書店流通を否定するわけではないが

本家英国の同盟は、自分自身が出版社(者)となることによる「書くことと出版の民主化」を活動の目的としていますが、私は既存の出版社や取次・書店という流通を、敵視するつもりも否定する気もありません。個人でやれることには、能力だけではなく、時間的な限界があります。一人では実現困難なプロジェクトも、役割を分担し組織で動くことで迅速に解決できる場合があります。

「作家同士の助け合い」だけでは難しいことは、商業出版にお任せすればいいと思うのです。インディーズから商業デビューをしたり、逆に商業でバリバリやってる人がインディーズ活動もやってみたりと、相互に補完し共存していけばいいでしょう。しかし、デジタル化やネットワーク化によって、「個人でやれること」の範疇が以前に比べれば飛躍的に広くなっているのも確かです。既存の出版社や取次・書店が、「個人でやれること」と同じレベルで安穏としていれば、いずれ淘汰されてしまうでしょう。企業には、個人の力ではできない役割を果たしてほしいものです。

「制作する」「登録する」「告知する」ハードル

昨年、AmazonのKindleストアが日本へ上陸するのと同時に、Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)をサービス展開したので、それをきっかけとして自己出版を始めた方も多いでしょう。私自身も、自分で制作した電子出版物を世に送り出している個人作家の一人です。KDPだけではなく、AppleのiBookstoreやGoogle Playブックス、パブーやBCCKSやGumroadなど、さまざまな手段を活用しています。通算販売部数は、1年ちょっとでようやく4桁に届きました。

実際に自己出版をやってみると、さまざまなハードルがあることに気づきます。作品を「書く」「描く」ノウハウに関しては言うまでもなく、配信に適したファイルを「制作する」工程や、配信プラットフォームに「登録する」工程、そして何より、その作品を多くの人に「告知する」こと、すなわち「買ってもらう」ことや「読んでもらう」こと。こういったさまざまなハードルを、「作家同士の助け合い」によって解決していこうというのが同盟の目的となります。

そういったノウハウそのものを出版物にして販売したり、セミナービジネスで稼ぐという手法もあるでしょう。でもこの同盟では、誰でも閲覧可能な形でノウハウを公開していきます。ウェブサイトのいちばん上に、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1 日本 (CC BY 2.1 JP) を掲げているのも、広くノウハウを共有したいからです。

ただ、私の持っているノウハウにも限度があります。だから、趣旨にご賛同頂ける方にはぜひ寄稿をお願いしたいです。残念ながら現状では同盟にはお金がありませんので、対価はお支払いできません。まずは、同盟活動を一緒に盛り上げていただけると嬉しいです。そうすれば、少なくとも「制作する」「登録する」工程は、それなりにハードルを下げられるでしょう。

個人作家にとって「告知する」ハードルは最も高いのですが、同盟のウェブサイトやSNSアカウントの情報発信力を強くしていくことで、告知の手助けができればと思います。そのためには、もっと多くの方々に同盟へ参加いただくことだと考えています。

同盟に参加するには?

同盟に参加するには、とくに資格は必要ありません。有償/無償、フィクション/ノンフィクション、プロ/アマ、文章/イラスト/写真/漫画など表現技法や手法・分野も問いません。電子出版が話題の中心になるとは思いますが、紙媒体で同人誌を発行している方も歓迎します。作家ではない方(システムベンダーや編集者など)にも、ぜひ参加してほしいです。

同盟に参加したい方は、日本独立作家同盟コミュニティの「自己紹介(参加表明)」カテゴリへ投稿して下さい。これはGoogle+のコミュニティシステムを利用し運営しています。Facebookと違って実名や顔出しが強制ではないのと、ウェブ上のオープン・スペースであることがGoogle+を利用している理由です。ただし、Googleアカウントの利用規約上、13才以上という制限があることはご承知下さい。

「新刊・キャンペーン情報」と「他著紹介(書評・レビュー)」カテゴリへの投稿内容は、日本独立作家同盟のウェブサイトでも紹介させていただきます。つまり、同盟では自分の作品を紹介するだけではなく、お互いの作品をレビューしあうことを推奨しています。誰かに自分の本を読んでもらってレビューしてもらうというのは本当に嬉しいことなので、恐らくこれがいちばん簡単な「作家同士の助け合い」ということになるでしょう。

これから自己出版をしようと考えている方や、もう既に自己出版をしている方も、どうぞ気軽にご参加下さい。まだ参加者数十名の小さな集まりですが、「作家同士の助け合い」によって互いに研鑽し、素敵な作品を生み出せるような土壌を一緒に育てていきましょう!

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