「月刊群雛」は次のステージへ進みます

2016年2月3日
posted by 鷹野 凌

日本独立作家同盟は2013年9月1日、「インディーズ作家よ、集え!」という設立宣言とともに活動を開始しました。最初は私一人での活動でしたが、あっという間に仲間が集まり輪が広がっていきました。まるで小さな雨粒が集まり、やがて大きな流れになるかのようでした。

気がつけば、本稿執筆時点でGoogle+のコミュニティ参加者は694名、一般会員(自己紹介を投稿して会員一覧に名前が載っている方)は323名。2015年5月26日には東京都の認証を受け、NPO法人として登記。電子雑誌『月刊群雛(ぐんすう)』(下は最新号)の発行、ウェブマガジン「群雛ポータル」の運営や、勉強会・セミナー事業も行うようになりました。

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そもそも「インディーズ作家」ってなんだ?

すこし余談ですが、ときどき私の周囲で「インディーズ作家って、そもそもなんだろう?」という定義論を見かけることがあります。私は、伝統的な出版手法である取次・書店流通を「メジャー」、それ以外の流通すべてを「インディーズ」と定義しています。違いはコンテンツの流通経路だけ、というスタンスです。要するに、音楽業界での呼び方を踏襲しているわけです。

つまり、コミックマーケットに代表される同人誌頒布も、Kindleダイレクト・パブリッシングに代表されるセルフパブリッシングも、「小説家になろう」のような投稿サイトも、どれもインディーズです。もっと言えば、同じ本がメジャーとインディーズの両方で流通するようなケースもあります。そういったさまざまなインディーズ流通を活用し、自らの作品を流通させる作家が「インディーズ作家」だと私は考えています。

音楽業界では、メジャーの力が弱まりつつあります。インディーズでヒットしてもあえてメジャーデビューせず、インディーズのままでやっていく方々も多くなっているようです。出版業界でも、年2回のコミックマーケットだけで1千万円以上稼ぐような事例もあり、今後このような傾向はさらに加速していくのではないかと思われます。

とにかく毎月出し続ける!

話を戻すと、日本独立作家同盟の電子雑誌『月刊群雛』は、2014年1月28日に創刊しました。伝統的な出版手法(メジャー)ではあり得ない「巧拙問わず」「ジャンル不問」「早い者勝ち」というコンセプトと、とにかく毎月出し続けるという強い意志のもと、2年間やり続けてきました。昨日発売の号で、通算25号+別冊2号。どの号も、1日も遅れることなく発行しています。新作だけで通算230作品、参加作家は120名を超えました。

下の書影は、原田晶文編集長代理による、昨日発売の『別冊SF群雛』です。編集長を私以外の方にやってもらったのは、これが初めてです。というのは、私が多忙で手が回らず、2周年記念号の発行は諦めようと思っていたところ、原田氏が「私がやります!」と手を挙げてくれたからです。なんとか無事発行までこぎつけましたが、私の経験やノウハウがうまく伝えられなかったため、かなり苦労したようです。

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なお、別冊がSF特集である理由は、『月刊群雛』ではやっていないジャンル縛りを試してみたかったこと、当団体の理事でもある藤井太洋氏に日本SF大賞受賞や日本SF作家クラブ会長就任とめでたいことが続いたことなどが挙げられます。別冊電子版は、2月末まで謝恩特価になっていますので、ぜひこの機会にお求めください。

ところで、最近ではあまり言われなくなった「三号雑誌」という言葉があります。要するに長続きしない雑誌のことです。インディーズ出版が盛り上がり始めたとき、いくつもの電子雑誌が立ち上がり、その多くが三号雑誌になっていきました。私は、やるからには続けたいと思いました。だから私は「とにかく毎月出し続ける」ことを最優先にして、なるべく編集手順を標準化し、省力化する方針で企画を立てました。その点においては、一定の成果を上げられたのではないかと思っています。

ここまで走り続けられたのも、読者の方々、参加いただいたインディーズ作家の方々、そして制作工程をボランティアで支え続けていただいた方々みなさまのおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

「読者不在」という反省

しかし、2年間やり続けた中で、ひとつ大きな反省点があります。それが「読者不在」です。書き手は大勢います。編集・校正・制作を手伝ってくれるメンバーもいます。しかし「とにかく毎月出し続ける」ことを編集方針の最優先にしたため、読者に対し強く訴えかける企画性や話題性に乏しい雑誌になっていました。

「巧拙問わず」と言えど、もちろん校正・校閲はしっかりやっています。少なくとも「日本語として読めない」ような作品はないはずです。ただ、短い制作時間ではどうしても限界があり、「もっと読者にとって面白い作品」に磨き上げることまではできずにいました。

「ジャンル不問」というのは、よく言えば「福袋」ですが、読者にとってみれば「なにが載ってるかわからない」「どれが自分にとって面白いかわからない」ような雑誌になっていたような気がします。ちなみに、ずっとジャンル不問で募集し続けてきたのですが、結果的に掲載作の8割は小説です。第三者からは「文芸誌」だと思われているような状態にあると思います。

「早い者勝ち」と言えど、参加者募集の通知に素早く反応できる方は限られます。いつしか、いつもよく似た顔ぶれが中心になっていました。そのこと自体は別に悪いことではありませんし、初心者優先枠を用意するなどの工夫もしてきました。ただ、参加慣れからか、充分に推敲していない原稿が目立つようになっていました。

「これは!」という作品をセレクトした「群雛文庫」

これらの問題に対するひとつの答えが「群雛文庫」の創刊です。過去の『月刊群雛』掲載作の中から、私が「これは!」と思った作品をピックアップして毎月数冊ずつ文庫化し、手頃な価格で提供しています。

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こういう形であれば、ジャンル買いする読者に訴求できますし、少なくとも「鷹野が面白いと思った」という評価軸は提示できます。登場人物紹介を追加したり、解説を載せたりといった工夫も施しています。昨年11月5日に創刊し、これまで13冊文庫化しましたが、『月刊群雛』とは違った手応えを感じています。

みんなでさらなる高みを目指そう!

そして『月刊群雛』そのものも、今回の2016年02月号から編集方針を一部変更しています。これまでの「早い者勝ち」は「私、書きます!」と名乗りを挙げた人から順に枠が埋まるルールだったのですが、これを「入稿順」に改めました。これによって、名乗りを挙げてから慌てて書き始める方が減り、入念に推敲した上で入稿する人が増えることを期待しています。

またこれまでは、素早く名乗りを挙げていったん枠を押さえてしまえば、入稿締切を過ぎたり、R18表現や差別表現など配信先で規制を受けてしまうような内容だったりしない限り、基本的にはなんでも掲載してきました。仮に「面白くない」「オチは?」「心に響かない」と思ったとしても、それは「載せない」理由にはなりませんでした。これを今後は、作家と制作チームによるブラッシュアップが完了した作品だけを掲載することにしました。「巧拙問わず」幅広く作品を受け付けるけど、すべてを載せるとは限らない形になったわけです。

仮に入稿が早くても、制作チームの判断によって「再入稿」をお願いすることになった場合、その枠は待機列の方へ順に開放され、再入稿時は最後尾に並び直す形になります。再入稿が締切に間に合わない場合は、次号以降に掲載見送りです。つまり、名乗りを挙げる早さの競争から、すこしシビアな、作品の中身での競争に変わったことになります。

これらはすべて、いままでよりもっと自信をもって『月刊群雛』を読者へ届けられるようにするためです。作家も、制作チームも、これまでより大変になります。しかしその結果、より多くの読者に読んでいただき、より多くの読者に楽しんでいただけることになればいいと思っています。

「月刊群雛 創刊の辞」を改めてここへ記します。

我々は雛だ。
まだくちばしの黄色い雛だ。

ひとりではろくに餌を採ることもできない。
だから、群れを作ることにした。

ひとりではできないことも
みんなの力を合わせればできる気がする。

我々は雛の群れだ。

けれども、巣の中で親鳥をただ待ち続け
餌をくれと口を開けて上を向いているだけの雛ではない。
少なくとも、自分の両足で大地に立っている。
空へ飛び立とうと、両の手を懸命にばたつかせている。

いつかあの大空を、群れをなして飛ぼう。
そのために、全力で走ろう。
力いっぱい、羽ばたこう。
汗をかこう。
繋げよう。
広げよう。
ここに我アリと、大声で叫ぼう。
できる限りの努力をしよう。

その先に、我々が目指す青い大空があるはずだ。