「未来の図書館をつくる座談会」完結!

2014年6月12日
posted by 仲俣暁生

左から内沼晋太郎さん、高橋征義さん、李明喜さん(司会)、河村奨さん、吉本龍司さん(下北沢オープンソースカフェにて。写真:二ッ屋 絢子)

昨年秋、「図書館」や「本」にまつわる斬新な仕事をなさっている4人の方々(numabooksの内沼晋太郎さん、達人出版会の高橋征義さん、リブライズの河村奨さん、カーリルの吉本龍司さん)にお集まりいただき、座談会を行いました。

この座談会を開催するきっかけとなったのは、2012年に前国立国会図書館長の長尾真さんが発表した「未来の図書館を作るとは」という文章です。館長在任中に「長尾ヴィジョン」という大胆かつ画期的な「未来の図書館」像を提示した長尾さんが、あらためて幅広い論点から図書館の可能性を論じたこのテキストを若い世代はどう受けとめたか、というところからスタートし、率直かつ真摯な議論が行われました(「マガジン航」編集人が入院中だったため、長尾さんがこの文章を発表した経緯にくわしい李明喜さんに司会をお願いしました)。

この「未来の図書館を作るとは」が達人出版会から電子書籍(無償)として刊行されるのを期に、このときの座談会の内容をウェブで全公開いたします。かなりの長丁場ですので、計三回に分けての掲載になりますが、どうかじっくりお読みください。(以上、Part 1のリード文より転載)

以下、参考までに各回の小見出しを転載いたします。

Part 1 「そもそも本ってなんだろう?」

・どのようなかたちで本に関わってきたか
・長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」を読んで
・本とは「生むときに苦しんだもの」のこと

Part 2「図書館にとってパブリックとは?」

・デジタルならではの「生みの苦しみ」
・「場所」のもつ意味
・図書館はどこまでを集めるべきか
・本屋も図書館もない地域
・「知」の体系と「物語」
・「サードプレイス」と「教会」

Part 3「インターネットがあれば図書館はいらない?」

・グーグルは「パブリック」といえるか
・インターネットと「自由」
・「固体」としての知識から、「水」のような知識へ
・紙の本に次のイノベーションはあるか
・「人」と「場所」をどう生かすか
・リファレンスの未来

なお、この座談会では図書館や広義のライブラリー、アーカイブについて考えるうえで参考になる多くの本や電子書籍が言及されていますので、その一覧を以下に示します。

長尾真著、LRG編『未来の図書館を作る』(達人出版会・電子書籍版)
岡本真・仲俣暁生編『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)
イアン・F・マクニーリー、ライザ・ウルヴァートン『知はいかにして「再発明」されたか――アレクサンドリア図書館からインターネットまで』(日経BP社)
内沼晋太郎『本の逆襲』(朝日出版社)
ケヴィン・ケリー著、堺屋七左衛門訳『ケヴィン・ケリー著作選集1』(達人出版会)
同『ケヴィン・ケリー著作選集2』(達人出版会)
朴順梨『離島の本屋〜22の島で「本屋」の灯りをともす人々』(ころから)
オレイ・オルデンバーグ著、忠平美幸訳『サードプレイス〜コミュニティの核になる「とぴきり居心地よい場所』(みすず書房)
齋藤純一『公共性』(岩波書店)

また座談会中で話題になっているマイクロ・ライブラリー・サミットについては、以下の本が参考になります。

礒井純充『マイクロ・ライブラリー図鑑−全国に拡がる個人図書館の活動と514のスポット一覧−』(まちライブラリー文庫)

執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。