マガジン航の今後について

2022年1月4日
posted by 仲俣暁生

新年あけましておめでとうございます。「マガジン航」編集発行人の仲俣暁生です。

記事の更新が昨年の5月以後止まっていたことで、多くの方にご心配をいただきました。いま思えば昨年5月は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の「第4波」が訪れていた時期で、私自身、長期化するコロナ禍のなかで先行きが見通せず、かなり悲観的な気持ちになっていました。

その後、昨年夏の「第5波」がやってきたときは、正直もうダメだと思い詰める瞬間もありましたが、ワクチン接種の拡大によりここ数ヶ月、ようやく落ち着いてこのサイトの今後を考える時間を確保することができました。そこでこの場を借りて、現状報告と今後についての考え方をお伝えしようと思います。

サイトの更新は今後も継続します

「マガジン航」は、2009年に株式会社ボイジャーとともに立ち上げたメディアです。その後、ボイジャーからの支援(具体的にはサーバの提供と編集制作費の補助)をいただいて発行を続けてきましたが、同社との合意による関係解消にともない、現在は編集発行人である私の個人メディアとして運営しています。

ウェブメディアはビジネスモデルが成り立ちにくく、「マガジン航」も私が編集人と発行人を兼ねることになって以後、寄稿者に原稿掲載料をお支払いすることができない状態が続いています。しかし、それを諒としてくださる寄稿者・投稿者の文章を私が責任をもって編集することで、一定の水準をもつ言論の場として維持していこうと決め、昨年春まで不定期的にではありますが、記事の更新を続けてきました。

半年以上の更新停止の間に私が悩んでいたのは、そうしたビジネスモデルの問題以上に、長引くコロナ禍のなかで、出版や編集の世界に対する自分の考え方が定まらない、ということに対してでした。現役の編集者として、あるいは文筆家として、この2年はとても厳しい時期だったことを、ここで告白しないわけにはいきません。なによりも紙のかたちで発行される雑誌がビジネスモデルを喪失し、そこに寄稿することで対価を得る「ライター」という仕事の足場が崩れたことは、金銭的な面でも、これからの出版をどう考えるかという思想的な面でも、乗り越えるべき大きな壁となりました。

このサイトの更新はもうやめてしまおうか、と思ったことも何度かあります。しかしその都度、寄稿を申し出てくれる方の声に励まされ、自分自身の意見はともかくとして、この場を自身の言論活動のために選んでくれた方のためにもサイトを維持しよう、ということだけは決意し、サイトを維持管理してきました。

あらゆるかたちで協力者を求めます

2022年が始まったいま、あらためて「マガジン航」はサイトの存続を宣言いたします。そしてこれまで同様の寄稿・投稿の募集をすると同時に、サイトの維持管理のために最低限必要なサーバ代、そして寄稿者への原稿掲載料の支払いや取材・編集費に充てるため、あらたなスポンサーも募集いたします。さらに、このメディアを一緒につくってくださる共同編集者も募集したいと思います。

「マガジン航」の財産は、これまでに掲載してきた記事の100名を超える寄稿者のコミュニティであり、その読者のコミュニティです。出版業界の先行きはまったく見通せませんが、ウェブ上での言論活動はむしろ、紙のメディアの衰退のなかで活発化しているようにも見えます。

このサイトもささやかながら、その一端を担いたいと思います。

半年以上のブランクはありましたが、いくつかの連載企画は新原稿もいただいております。私自身のエディターズノートも、なにか世に問うべきことがあれば、不定期に更新していきたいと考えています。今後も「マガジン航」へのご協力とご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。