「アマゾンだ やれグーグルだ 我一人」……一句、最近の心境をのべてみる。
冗談はさておき、重要なニュースがとび込んできた。「インターネット・アーカイブ(とその友人たち)が”BookServer”を発表」。「これはグーグル、アマゾン、そしてアップルの真の競争相手になる可能性がある」――とある。わが心境の琴線がびりびり振れた。興奮気味に伝えられた発表の概要を翻訳したのでまずはお目通しいただきたい。詳細レポートはフラン・トゥーラン(Fran Toolan)によるものだ。
ブルースター・ケール(Brewster Kahle)、この名前に覚えのある人は少なくないとおもう。WaybackMachineで有名なインターネット・アーカイブ(Internet Archive)の創始者、図書館長。かつて『季刊・本とコンピュータ』(2003年冬号)で、室謙二さんと二木麻里さんが”Book Mobile”計画の全容をレポートした。私はその時からブルースター・ケールという名前が頭の中から離れない。
200万点の蔵書を有する大図書館の前で、このミニバンには100万冊の本があるとデモっているのです。車の上でバンザイしているのがブルースター・ケール親子。パラボラアンテナをつけたミニバンで全米の小学校などを周わり、コンピュータで欲しい本を選ばせ、そのデータを受信してプリンタで出力します。子供たち自身に本を作らせて配っています。
ブルースター・ケールはマサチューセッツ工科大学卒の工学博士で,シンキング・マシン社でスーパーコンピュータの設計に携わった超一流の頭脳。そういう人が社会に出て率先して奉仕しているのです。そして今、彼は、アメリカの非営利組織インターネット・アーカイブの設立メンバーとして先頭にたっています。
ありえねぇ、この日本で。そうはおもいませんか。優秀な頭脳、活発な行動力と精神、これらを発揮する場はおそらく市井ではなく、大企業の奥の奥、国家公務員の上の上、やがては議員でしょうか。
以前から私たちは主張してきた、いかなるフォーマットでも即座にダウンロード(あるいは可読)できる電子書籍の登場をハードメーカーが阻害しないこと。これをハードメーカーに期待するのでなく”BookServer”が担ってくれる。本当かい! それが可能ならこんな苦しみするんじゃなかったに。
とはいうものの”BookServer”の背後にはおおくの人たちが力を合わせている。この事実に私たちは注目すべきではないか。それぞれの才能と技能が、出版というかけがえのない人の築いた“知”のシステムを次世代へと支え保とうとしている。そこにはれっきとした私企業の面々もいたということ。各種フォーマットの開発者もいたということ。そして忘れてはならないのは視覚障害者への道も敷かれていたということだろう。見習うべきいくつかがここにはある。
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