2009年秋。9月中旬と10月上旬に「本と出版の未来」を考える上で世界的に重要な人物が2人、国立国会図書館で講演した。一人は9月15日と17日に国立国会図書館の東京本館と関西館で「インターネットと文化:チャンスか危機か」と題して講演したジャン-ノエル・ジャンヌネー氏(前フランス国立図書館長、ユーロパルトネール所長)、もう一人は10月2日に東京本館で「パピルスからPDFへ:よみがえるアレクサンドリア図書館」と題して講演したイスマイル・セラゲルディン氏(アレクサンドリア図書館長)である。すでに両氏の講演については、ニュースサイトやブログで報じられているので、ここでは都合3回の講演を聴いて考えさせられた彼我の差を記しておく。

ジャン-ノエル・ジャンヌネー氏
両氏、特に『Googleとの闘い』(岩波書店、2007年)と日本語訳された書籍の著者であるジャンヌネー氏の姿勢は、おそらくは聴衆の一部の期待に反して、デジタル化に代表される技術の進歩、そして、その最先端を行くグーグルを真っ向から否定するものではなかった。これまでその発言が注目されることが多くはなかったセラゲルディン氏にしても、技術の進歩を果敢にリードするグーグル創業者らを讃える言葉をスピーチに交えたのである。グーグルに象徴されるデジタル化の波への感情的な反発を抱えて会場に足を運んだ聴衆がいたとすれば、さぞかし落胆したことだろう。
だが、もし残念な思いを抱えたまま会場を後にした参加者がいたとすれば、非常に残念なことだ。それほどに両氏の講演は日本における「本と出版の未来」を考える上での示唆に満ちていたのだから。
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