デジタル版「本で床は抜けるのか」について

2018年2月20日
posted by 「マガジン航」編集部

本誌で2012年から2014年にかけて連載され、2015年には単行本化された「本で床は抜けるのか」の電子書籍版の販売に関して、ボイジャーから下記のステートメントが発表になりましたので転載いたします(「マガジン航」編集部)


西牟田靖 著 デジタル版「本で床は抜けるのか」について

この作品は書籍として、本の雑誌社から2015年3月発売されました。価格は1600円(税別)。そして、今年3月23日に中央公論新社から文庫本、価格800円(税別)で発売が行われる予定です。文庫化に際して中央公論新社は電子書籍の発売も行うとのことです。

西牟田靖著「本で床は抜けるのか」は、Web雑誌・マガジン航において2012年4月17日から2014年7月10日まで連載が行われました。Web雑誌・マガジン航は、当時ボイジャーの100%支援のもとに活動・運営していたこともあり、単行本化される際にデジタル出版はボイジャーから販売されることになりました。デジタル出版の価格は、単行本の売上への心配から低く設定することはできず1200円(税別)とし、2015年6月18日発売開始いたしました。

中央公論新社から電子書籍の販売が行われる予定との情報は、2017年11月に作家・西牟田靖さんから伝えられました。そして、西牟田靖さんはボイジャーでのデジタル出版の継続を強く望まれました。

はたして、同じ作品のデジタル出版が2社の版元から販売されることが可能なことかどうか、私たちは検討いたしました。作家・西牟田靖さんとボイジャーとの間で締結されたデジタル出版に関わる契約において、ボイジャーはデジタル出版をまだ相当期間配信・販売する正当な理由を保持していることが確認されました。これは排他的な権利でもあり、契約上ボイジャーは他社のデジタル出版を市場から排除する申し立てのできる立場でありました。

一方で、このような権利主張が何をもたらすかの冷静な判断も必要です。私たちボイジャーは、作家・西牟田靖さんがもっとも有益にこれからの創作活動を推進されることを願う気持ちでいます。作家活動の範囲は広くあり、デジタル出版は全体の売上のなかではまだまだ少なく、作家の新たなる創作活動を支援する原動力になり得ていません。そうである以上、何よりも作家に対して、また読者に対して、混乱を与える行動は慎まなければなりません。その観点から、ボイジャーはこの際、デジタル出版から本作品の撤退を表明したい旨、作家・西牟田靖さんにお伝えすることになりました。

ここに至ってなお、作家・西牟田靖さんはボイジャーでのデジタル出版の配信・販売の継続を願われました。この作品が生まれる経緯を考え、またデジタル出版に際して協力を惜しまなかった私たちの活動に強い印象を抱いてくださったからです。この事実についてはデジタル版「本で床は抜けるのか」の「あとがき」に記されていることでもご理解いただけることでしょう。この「あとがき」は以下よりご覧いただけます。

https://r.binb.jp/epm/e1_70425_13022018171236/

作家・西牟田靖さんの意志を十分に受けとめ、私たちは以下の通り結論することとなったのです。

1.デジタル版「本で床は抜けるのか」はボイジャーのRomancerストアにて販売を継続する。

2.自社直販Romancerストアでのデジタル版「本で床は抜けるのか」の価格は自由に決める。

3.現状、その販売価格は250円(税別)とする。

4.この新しいスタンスでの発売は、2018年2月20日(火)とする。

5.ボイジャーは、2018年2月19日以降、直販Romancerストア以外での販売を中止する。

私たちボイジャーは、西牟田靖 著 デジタル版「本で床は抜けるのか」を引続き自社直営Romancerストアで販売する者として、本作品が広く、低廉に、読者の方々に閲覧されていく活動を継続してまいります。一人でも多くの読者に、この情報が届けられることを切に願うものです。

株式会社ボイジャー

執筆者紹介

「マガジン航」編集部
2009年10月に、株式会社ボイジャーを発行元として創刊。2015年からはアカデミック・リソース・ガイド株式会社からも発行支援をいただきあらたなスタートを切りました。2018年11月より下北沢オープンソースCafe内に「編集部」を開設。ウェブやモバイル、電子書籍等の普及を背景にメディア環境が激変するなか、本と人と社会の関係をめぐる良質な議論の場となることを目指します。