読み物コーナーに新記事を追加

2010年3月1日
posted by 仲俣暁生

読み物コーナーに、numabooksの内沼晋太郎さんによる「拡張する本~本の未来にまつわる現場報告」という文章を掲載しました。原稿用紙にしてたっぷりと30枚以上の、読み応えのある論考です。ブックコーディネーターとしての内沼さんの活動は、上のリンク先のサイトや、昨年に出た著書『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』でくわしく知ることができます。

内沼晋太郎さんの著書『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(左)。この本は前から(タテ組み)とうしろから(横組み)の両方で読むことができる。奥は今回紹介する記事が最初に掲載された『早稲田文学増刊 wasebunU30』。

内沼晋太郎さんの著書『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(左)。この本は前から(タテ組み)とうしろから(横組み)の両方で読むことができる。奥は今回紹介する記事が最初に掲載された『早稲田文学増刊 wasebunU30』。

今回の文章は、もともと「U30」つまり30歳未満の若い世代の書き手を集めた文芸誌に掲載されたもの。インターネットや携帯電話とともに成長したこの世代にとって、アナログかデジタルか、という対立はあまり意味をもたないようです。

コーディネーターとして業界の内と外をつないできた内沼さんの目には、古書や洋書や同人誌、トークイベントやパーティなどのほうが、「出版流通システムの都合で均質化された紙の束」よりもはるかに自由で魅力的で可能性のある「本」として映っている。そして「電子書籍」も、そのうちの選択肢の一つとして相対化されています。

ともすれば「紙」か「デジタル」かという「神学論争」に陥りがちな電子出版をめぐる議論ですが、紙もデジタルも、リアルイベントもインターネットも並列で受け止める態度の方が、はるかに自然です。むしろ問題なのは、出版業界の「内」と「外」の間によこたわる商習慣の落差や認識のギャップではないか、という重要な指摘が、この文章ではなされているように思います。

いま「出版業界」の外で行われている、さまざまな「本」への取り組みが具体的にたっぷり紹介されており、それらへのポータルとしても役に立つ記事です。出版業界内の方も、業界以外の方も、どうぞお楽しみ下さい。

執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。