TIBF2009 萩野正昭講演録

2009年7月11日
posted by 「マガジン航」編集部

17年間ボイジャーがやってきました活動、そして今回の東京国際ブックフェア4日間の一部始終を振り返り、これからのデジタル出版、デジタルパブリッシングというものが本当に船出をしていけるのかどうか、最終日の最後の時間にあたり、皆さんと一緒に考えていきたい。

色々なことがありました。また新しいこともたくさん考えてきております……全てつまびらかにお話ししながら、皆さんと一緒に船に乗り、出て行きたいとおもっています。

最初に、この『デラシネ――わたくしの昭和史』という本をご覧ください。そしてもう一冊、『ひらめきのマジック』という本がここにあります。ご覧のとおり、クラシックな紙の本です。二冊ともボイジャーのドットブック(.book)という電子出版のフォーマットで作られたものです。

オンデマンド・プリントといいまして、必要な量だけ印刷する方式で作られたものです。.bookというボイジャーのフォーマットで作りますと、たった一冊だけ紙の本を印刷する道がつけられています。それで作った本なんです。

著者は大正12年生まれ、今年86歳のおじいさんです。栗山富郎さんといいます。実は映画のプロデューサーでいらっしゃいまして、東映というところでいろいろな名作を作った人です。高倉健の映画を作っている降旗康男という監督のデビュー作品『非行少女ヨーコ』を作りました。緑魔子、谷隼人、そういう俳優の方たちが出たものです。

それから佐藤純彌監督、この間『男たちの大和/YAMATO』を作りましたが……その佐藤純彌監督と『組織暴力』なんていう映画をプロデュースしました。それから、鹿島建設が霞ヶ関ビルを作ったときの映画『超高層のあけぼの』そういう映画も作った、大変有名な映画プロデューサーだったんです。

栗山富郎さんが自分の人生を家族に言い残したいということで、しかし自分は自費出版なんてそういうことはやりたくないんだと、単純に一冊だけ家族に残したいんだということで、私のところに相談に来られたんです。

本は出来上がりました。こういう、三百何ページの本が。本を作るのは難しいことじゃなかったんです。ただ、この人は、実は同時に、段ボール箱二箱くらいいっぱいの写真と資料を持ってこられました。それを見て、本当ならば紙の本の中に写真や資料を挿入して作ってみたいと考えましたけども、それでは有り余る量があったわけです。

この本を見ると帯のところに、www.dotbook.jpのderacineといういわゆるURLです。インターネット上の戸籍番号、これが振ってあります。ボイジャーは本に固有の戸籍番号というのを作って、それに資料をおいて、その資料を、この本を見ながら一緒に連動して見ることができるようにしたわけです。

今後ボイジャーが出版するものには、必ずその固有のURL、戸籍番号を振っていく……それは写真があるとかないとか関係なしに、できあがった本に対して一つの「場」が保証される、本とは未来へ発せられた一つの契機なのだ、そういう風にしていこうとおもったんです。

続きはこちら:http://www.voyager.co.jp/sokuho/img_tibf_report/tibf09_hagino.html

執筆者紹介

「マガジン航」編集部
2009年10月に、株式会社ボイジャーを発行元として創刊。2015年からはアカデミック・リソース・ガイド株式会社からも発行支援をいただきあらたなスタートを切りました。2018年11月より下北沢オープンソースCafe内に「編集部」を開設。ウェブやモバイル、電子書籍等の普及を背景にメディア環境が激変するなか、本と人と社会の関係をめぐる良質な議論の場となることを目指します。