Twitter私論

2010年1月31日
posted by 橘川幸夫

TwitterをしつつTwitterについて考える。まだ何も概念措定されていない「動き」について、その只中で思考出来ることは快楽だ。そこには定かならざる可能性の大きなうねりだけがある。自分自身の「つぶやき」を「ふぁぼったー」して、更に思考をブーストしてみる。

1. 「なう」でっせ。

◇物理的な位置情報確認のなう情報から始まって、時代の中の主体性確認の情報装置へと変容しつつある。ていうか変容させたい。
metakit/橘川幸夫 posted at 2010-01-20 09:37:57 2 favs bynaoyaabhimaitsme

◇なう=私がここにいるというのは物理的な空間にいるというのと同時に大きな時間の流れの中にいるということ。メメントモリ。
metakit/橘川幸夫 posted at 2010-01-20 09:44:27

Twitterの「なう」には2種類ある。それは「渋谷なう」「実家なう」などという具体的な位置情報である。初めてTwitterに入った頃は、この「なう」がうっとおしく感じる人もいるだろう。Twitterというかネットワーク環境は、リアルな社会の完成にともない、孤立感を深めた人同士がつながるためのものだ。一見、リア充しているような人でも、潜在意識の奥底で自らの存在に対して不安がなければ、わざわざネットでコミュニケーションする必要はない。「なう」は、分断化され、疎外され、孤立を深める現代人の「いま、ここにいるよ」という、魂の叫びである(ホントか)(笑)。

さて、「なう」には、もう一種類ある。それは「晩飯なう」とか「プロポーズなう」というように、行為に対する「なう」情報である。物理的な位置情報の「なう」が「もの」としての情報だとすれば、こちらの行為情報は「こと」としての情報である。人や社会は「ものごと」で成立している。どちらが優位ということではなくて、ものごとのトータルな融合が自らの主体性の確立において必要なのである。

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年1月28日
posted by 仲俣暁生

アップルが新たに発表したタブレットマシンiPadには、iBooksという電子書籍のアプリケーションが載るようです。アップルの参戦で、電子書籍の話題はいっそう盛り上がっていますが、気になるのは電子書籍の読書にかかわるプライバシーの問題です。

昨年に公開した「プライバシーに関する電子書籍バイヤーズガイド」という記事で、電子フロンティア財団のエド・ベイリーは「主要な電子書籍リーダーのメーカー」のうち、電子書籍の利用者に対し、「どんなデータが収集されるのか、またその理由についてはっきりとした言葉で消費者に説明しているところは皆無」であることに、警鐘を鳴らしています。

先頃、この記事で紹介されている各社のプライバシー・ポリシー一覧(アップルのiBooksについては未掲載)が更新されていたので、「電子書籍のプライバシーポリシー一覧」という新たな記事として「読み物」コーナーに追加しました。電子書籍の購入を検討している方は、この一覧表をじっくりとお読みになってみてはいかがでしょう。

電子書籍のプライバシーポリシー一覧

2010年1月28日
posted by 「マガジン航」編集部

「プライバシーに関する電子書籍バイヤーズガイド」に掲載した各社の電子書籍のプライバシーポリシー一覧が改訂されていたので、ここにアップデート版を掲載します。

1. ユーザーが何を読んでるか監視できる?

・Google Books: Yes ウェブサイト上で閲覧した特定の本やページを記録する。

・Amazon Kindle: Yes 記録する情報の正確なパラメータは不明だが、読んだ本やページを含む。

・B&N Nook: 不明

・Sony Reader: No 機器上のコンテンツに関する情報を記録しない。

FBReader: No ユーザーから情報を収集することはない。

2. 機器は提携する電子書籍ストアから購入した本しか互換性がない?

・Google Books: N/A Google Booksは閲覧機器ではないが、DRM保護されてないPDFやEPUB形式のパブリックドメインの本をダウンロードできる。それを除けば、Googleのウェブインタフェースを通じてオンラインで読まなくてはならない。

・Amazon Kindle: Yes AmazonのプロプライエタリなAZW、そしてDRM保護されてないTXT、MOBI、PRC形式のファイルがKindleと直接互換性がある。新型のKindleはネイティブなPDFサポートがある。

・B&N Nook:  No 自分のところ以外のソースから取得したEPUBやPUBといった一般的な電子書籍フォーマットをサポートしている。しかし、それらの形式はNookの多くの機能をサポートしていない。AZWはサポートしていない。

・Sony Reader: No DRM保護されてないフォーマットに加え、EPUB(Adobe)、PDF(Adobe)、BBeB(PRS)を含む複数のDRM保護された形式をサポートする。AZWはサポートしていない。

FBReader:  No EPUB、FB2、MOBI、PRC、OEBなどのオープンでDRM保護されない幅広い形式をサポートする。PDFやAZWはサポートしていない。

3. 書籍の検索履歴を記録できる?

・Google Books: Yes すべての検索データをIPアドレスとともに記録。ログインしていれば検索記録はユーザのGoogleアカウントと関連付けもする。ログインしてなければ検索記録とユーザアカウントと関連付けない。

・Amazon Kindle: Yes 機器上で閲覧、検索した製品情報を記録し、Amazonアカウントと関連付ける。書籍内を検索するにはクレジットカード情報が登録されたアカウントにログインする必要がある。

・B&N Nook: Yes Nook上の検索が記録されるかプライバシーポリシーが不明確だが、通常B&Nはウェブサイト上での検索や閲覧ページの情報を記録している。ログインしていればユーザアカウントと書籍検索を関連付けるかB&Nは明らかにしていない。

・Sony Reader: Yes プライバシーポリシーが不明確だが、消費者がReader Storeを利用したら、ソニーはIPアドレスやメッセージ情報を記録し、データをReader Storeアカウントに関連付け可能(閲覧にはログイン必須)。

FBReader: No 書籍検索に関するデータを収集しない。

4. 書籍の購入履歴を記録できる?

・Google Books: Yes 書籍の購入履歴はすべてGoogleアカウントに関連付けられる。

・Amazon Kindle: Yes Amazonは利用者の購買履歴を収集する。

・B&N Nook: Yes B&N の電子書籍ストアからの購入に関するプライバシーポリシーが不明確。B&Nは、利用者がメンバー向けロイヤリティプログラムに登録していれば、購入履歴と関連付けると言っているが、購入履歴がB&Nのオンラインアカウントと関連付けられるかどうかについては何も言ってない。B&N は機器上で読んだ本を記録しない。

・Sony Reader: Yes プライバシーポリシーが不明確だが、本を買うのにログインしなければならず、またソニーはライセンスを理由に利用者に識別クッキーを割り当てるので、ソニーはReader Storeから購入を記録していると思われる。ソニーは他から取得した本を機器上で読む場合には記録しない。

FBReader: No 書籍購入に関するデータを収集しない。

5. アグリゲートされない形態で収集された情報を誰と共有できる?

・Google Books: 法執行機関、訴訟当事者、Google自身の製品。

・Amazon Kindle: 法執行機関、訴訟当事者、Amazon自身の製品。

・B&N Nook: B&Nの電子書籍ストアを通じて収集した情報に関して:法執行機関、訴訟当事者、B&N自身の製品。

・Sony Reader: Reader Storeを通じて収集した情報に関して:法執行機関、訴訟当事者、ソニー自身の製品、Reader StoreのパートナーであるBorders。

・FBReader: No 何の情報も収集しない。

6. 消費者の同意なしにその企業以外と情報を共有できる?

・Google Books: No 利用者はGoogle以外と個人情報が共有されるのをオプトインしなければならない。

・Amazon Kindle: Yes 利用者は特定の宣伝、マーケティング用途に関してのみ情報の利用をオプトアウトできる。

・B&N Nook: Yes 利用者は特定の宣伝、マーケティング用途に関し、またサードパーティによる情報の解析利用に関してのみ情報の利用をオプトアウトできる。

・Sony Reader:Yes Reader Storeを通じて収集した情報に関して:利用者は特定の宣伝、マーケティング用途に関してのみ(オプトアウトかオプトインの原則に従い)情報の共有を拒否できる。Reader Storeを運営するBordersとの追加的な情報共有をオプトアウトするには、Bordersに直接コンタクトを取らないといけない。

・FBReader: No 何の情報も収集しない。

7. 消費者がその情報にアクセス、修正、削除するメカニズムを欠いている?

・Google Books: No 消費者は書籍の題名を削除したり、アカウントとの関連付けをなくすことができるが、それを読む権利を失う可能性がある。利用者は検索履歴を削除できる。

・Amazon: Kindle ある程度 顧客はアカウントプロファイルにアクセスして情報を更新できるが、Amazonは修正する前の記録を保持する可能性がある。検索や購入の履歴にアクセスしたり削除する権利はない。

・B&N: Nook ある程度 利用者はいつでもアカウントプロフィールにある情報にアクセス、修正、変更できる。検索や購入の履歴にアクセスしたり削除する権利はない。

・Sony Reader ある程度 Reader Storeを通じて収集した情報に関して:利用者は特定の個人情報の更新要求を送信でき、妥当な時間でそれが実行される。検索や購入の履歴にアクセスしたり削除する権利はない。

FBReader: No 何の情報も収集しない。

(日本語訳:yomoyomo)

■関連記事
プライバシーに関する電子書籍バイヤーズガイド
Updated and Corrected: E-Book Buyer’s Guide to Privacy(Electronic Frontier Foundation)

〈ミニコミ2.0〉とはなにか?

2010年1月25日
posted by 武田 俊

はじめまして。KAI-YOUという、ミニコミ誌の制作やイベントの企画を行っている組織の代表をしております、武田俊と申します。今回は、以前の仲俣暁生さんの記事「リトルマガジンのゆくえ」に対して、その作り手の立場から何か答えるというような形式で書かせて頂こうと思っています。

といっても具体的には何をやっている人間なのか、という疑問を持たれることと思いますので、簡単に自己紹介をさせていただきます。

これまでのKAI-YOUの主だった活動としては、「世界と遊ぶ文芸誌」といういささか大仰なキーワードのもとに動いているミニコミ文芸誌『界遊』の制作と、それに関係するイベントの企画・運営が挙げられます。そして昨年の11月からは、〈ミニコミ2.0〉というタイトルを掲げていくつかの企画を行ってきました。

あえて「ミニコミ」と口にしてみる

〈ミニコミ2.0〉企画は、奇しくも昨年休刊となってしまった『STUDIO VOICE』のウェブサイトである「STUDIO VOICE ONLINE」内のコンテンツから始まり、ジュンク堂書店新宿店に企画を持ち込み行ったフェア、フェア担当の書店員・阪根正行さんとの対談記事、そして批評家/編集者である宇野常寛さんと、ライター/編集者の速水健朗さんによるトークイベント、といったようにウェブとリアルを往復するような形で展開させていきました。

ジュンク堂書店新宿店で行われた、〈ミニコミ2.0〉フェアの展示風景。

ジュンク堂書店新宿店で行われた、〈ミニコミ2.0〉フェアの展示風景。

ここでポイントとなるのは、いまなぜミニコミ誌なのか、ということです。もちろんミニコミ誌というメディアは今に始まったものではありません。ビートニクと呼ばれてきたような詩人や作家たちが自らの本を手作りで世に届けたものもそうですし、ファンジンや同人誌といったようなものも当てはまります。一言でまとめてしまえば、マスコミュニケーションという大きな存在に対して、カウンターとして振る舞い存在するインディーズメディアと呼ぶことができます。ミニコミュニケーション、という略される以前の言葉自体を考えればもっともな話です。

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日本産アニメ・マンガの違法流通について考える

2010年1月21日
posted by 椎名ゆかり

「電子書籍元年」とも言われる今年、年頭から電子書籍をめぐっていろいろとニュースが舞い込んでいる。たとえば「電子書籍へ大手が大同団結」(Asahi.com)は、キンドルに代表される読書専用端末の到来による市場変化を見越した大手出版社の「日本電子書籍出版社協会」(仮称)設立の動きを伝えたものだ。

わたしはマンガ専門の出版エージェントや翻訳をしている仕事柄、電子書籍には人並み以上の関心をもっている。しかし電子書籍を(たとえ専用端末上であっても)消費者にお金を出して積極的に購入してもらうには、ネット上に流通している「著作権者に無断でアップロードされ、その気になれば誰にでも無料で手に入る違法コンテンツ」がなくなることも同様に大事だと考えている。

監視団体による調査報告

ここにアトリビューター(Attributor)というネット上の違法コンテンツを監視する団体が1月14日付で発表した、ネット上の違法コンテンツの流通に関する調査結果がある。2009年の第4四半期にアメリカで流通していた14ジャンルの913の書籍について行われたものだ。

調査の簡単なまとめは以下の通り。

・同団体が調査した25のウェブサイトから900万回を超える違法ダウンロードが確認された。

・4つの無料ファイル共有サイトからはおよそ300万回の違法ダウンロードが認められ、この4つのサイトだけみても全体の違法流通コンテンツの3分の1に及ぶ。

・900万回の違法ダウンロードを小売価格で計算すると、ほぼ3億8千万ドルに相当する。

・調査対象となった本の市場での占有率から違法ダウンロード全体の小売価格を推定すると28億5千万ドルから30億ドルとなる。

・上記の金額はアメリカの出版売上のほぼ10%を占める。

・平均するとおよそ1つの本につき1万冊が違法に読まれている計算となる。

・本のジャンルと違法ダウンロードされる回数には相関関係が見られる。いちばん多くダウンロードされているジャンルは「ビジネスと投資」で平均1冊につき1万3千回。「フィクション」は調査されたジャンルの中ではいちばんダウンロード数が少なく、平均1冊につき2千回。

(上記調査のジャンル、小売価格は共にアマゾンを参考にしている。調査対象となった913冊は同四半期における出版市場の13.5%を占める)

『パブリッシャーズ・ウィークリー』のインタビューを受けて、アトリビューターは「1年前に調査を始めたときよりも状況は悪化している」と答えた。

アトリビューターのウェブサイト

アトリビューターのウェブサイト

さらに調査結果のまとめの中で、この結果は「違法ダウンロードがどのくらい業界に損失を与えているかを示す」ものではない、としている。つまりこの調査結果は「違法ダウンロードがなかったらどのくらい本が購入されていたか?」の質問の答えにはならず、違法ダウンロードが無ければその分の本が実際に購入されていたと考えるのは安易だ、と警告する。

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