アップルのiPadが日本でも発売されたこともあり、さまざまなメディアが電子書籍時代の本格的な到来を伝えています。書物の歴史がいま、大きな曲がり角を迎えつつあることはたしかでしょう。では、この先にはどんな本の未来が待っているのでしょうか。
いま私たちの目の前で起こっているのは、たんに「電子書籍」という新しい技術や商品の登場ではなく、これまで長く続いてきた書物の生態系に激変をもたらすかもしれない、書物史におけるパラダイムシフトです。この変化がもつ意味は、出版不況からの突破口といった十数年程度のタイムスパンではなく、百年、数百年、場合によっては数千年という、より大きなスケールで考えるべき問題をはらんでいます。
すでに海外では、ロバート・ダーントンの『The Case for Books』をはじめ、電子書籍の登場がもたらす変化を、書物史のなかに位置付けようとする試みがはじまっています。以前、「マガジン航」にダーントンのこの著作についての書評コラム「グーグル・プロジェクトは失敗するだろう」を寄稿してくれた津野海太郎さんが、今秋、国書刊行会から新著の刊行を予定しています。その本に収録される書き下ろしの文章「書物史の第三の革命~電子本が勝って紙の本が負けるのか?」を、今月から何回かに分けて、「マガジン航」で掲載していくことになりました。
今回掲載するのは、「本と読書の世界が変わりはじめた」と題された第一章です。今後も月1、2回のペースで連載していきます。どうぞご期待下さい。
執筆者紹介
- フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。
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