日本十進分類法のオープンデータ化に向けて

2015年10月3日
posted by 吉本龍司

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図書館の本は、分類番号順に本棚に整理されています。このとき使われる分類規則、日本十進分類法(NDC)は、国内の図書館の事実上の標準となっています。

しかし、二次利用やデータ公開が公益社団法人である日本図書館協会により大幅に制限されており、検索精度の向上や様々な分野での図書館データベース活用の大きな障害となっています。また、カーリルのような新しい事業者には多額のライセンス料とデータの再配布を制限する契約を要求する一方、従来からNDCを活用している事業者はライセンス料を一切負担していません。このような運用は公益社団法人としてふさわしいものではありません。

NDCは公共性の極めて高いプロトコルであり、だれでも、いつでも活用できるようにするべきです。これまでカーリルでは日本図書館協会に対して再三にわたりオープンデータ化を要請してまいりましたが未だ実現しておりません。現在、図書館関係者有志によりNDCのオープンデータ化に向けた署名活動が始まっており、当社もこれを全面的に支持します。

2015年9月21日
株式会社カーリル
代表取締役 吉本龍司

詳しくはNDCオープンデータ化への要望について(署名集めのお願い)をご参照ください。 http://ndclod.in.coocan.jp/

呼びかけ文の内容

本年、日本図書館協会から日本十進分類法(以下、NDC)10版が公開されました。日本十進分類法の20年ぶりの改訂ということで各地で注目されています。NDC10版をまとめた日本図書館協会は公益社団法人として公共の利益のためにつくすことが求められる団体であります。そこで作成されたデータは、それを社会に対してオープンにすることが公共の利益・社会の発展に直接的に寄与するものである場合には特に、公共データに準ずる存在であることが期待されているともいえるでしょう。

公共データの公開については、総務省なども広く自由に(二次利用可能な形で)公開することを提案しており、近年では多くの自治体でもデータをオープン化する動きが進んできています。また、オープンデータを利用するための活動も各地で活発化してきました。オープンデータを利用しようとする人々へのアンケートでは常に上位に日本十進分類法があげられるという状況もあります。

しかし、日本図書館協会(以下、JLA)は現在のところNDC8版および9版のLinked Data化についての研究を国立国会図書館(以下、NDL)との共同で始めたにとどまっており、この研究成果をオープンにするかどうかも「未定」とされています

言うまでもなく、NDCは図書館の資料組織の中心的なツールであり、日本中の図書館で利用されているだけではなく、図書館外も含めて図書の管理を行うさまざまな局面での利用も広がっています。このように社会的にも大きな意味がある基本的なデータを社会の基盤とするためには、自由に利用できる(オープンに公開される)環境を整えることが極めて重要であると思われます。 そこで、少なくともJLAとNDLが共同で行っているNDCのLinked Data化の成果をオープン化することを要望すべく、署名を集めることといたしました。別紙に示す「NDCの利用促進およびLOD化に関する要望書」(Web公開もしております) に賛同いただける方からいただいた署名を集約し、本年末を目処にJLA理事長に提出したいと考えております。本提案の趣旨にご賛同いただき署名いただくとともに,皆様のまわりで賛同いただける方の署名を集めていただければ幸いです。お集めいただいた署名は、以下にお送りください。よろしくお願いいたします。

●署名とりまとめ窓口
〒305-8550 茨城県つくば市 春日1-2
筑波大学図書館情報メディア系 逸村裕研究室内
NDCオープン化署名取りまとめ窓口

NDCは有償でライセンスされているのですか?

日本図書館協会はNDCのデジタルデータをライセンス販売しています。これをMRDFといいます。NDC第9版のデジタルデータ版であるMRDF9は図書館40万円(税別)、企業100万円(税別)とされています。カーリルでは、契約書のひな型の提供を受け、契約に向けて検討しましたが、図書館と企業の基準や、許諾範囲などに曖昧な点が多く契約締結には至っておりません。

多くの図書館のウェブサイトでNDCを活用したサービスが公開されていますが?

ライセンス契約を締結したうえで、別途日本図書館協会が許諾した場合は掲載することができるとされています。そのため基本的には各図書館がライセンス料を負担した上で、別途許諾を受けていると考えられます。例えば市川市立図書館や、高知県立図書館京都府立図書館など一部の図書館ではNDCを活用した絞り込み検索が可能です。しかし一般的に図書館に対しては「第三次区分表」までしかウェブに掲載することはできないとの見解が示されており、これにより多くの図書館システムでは分類検索の選択肢が第三次区分表までしか選択支援機能をサポートしていません。

また、ライセンス契約を締結していない図書館はOPACの書誌ページ等に分類記号は表示できても、それがどういう意味であるかを示すことができません。

ライセンス契約し、許諾を受ければいいのでは?

カーリルが内部的に利用するだけではあればその通りです。
今後、各図書館が自らの所蔵データや書誌データ、あるいは配架図などのデータをオープンデータとして活用する際、これらのデータと密接に関わるNDCが必須となります。しかしNDCのライセンス契約は利用者ごとに締結しなければならないため、図書館の公開するオープンデータの活用が大幅に制限されることになります。これらのオープンデータは、もちろんカーリルだけではなく個人や法人、営利目的や非営利目的にかかわらず自由に利用できるようにするべきです(なお2014年10月時点で、”MRDF9のライセンス契約を締結した民間企業はこれまでにない”との見解を日本図書館協会より伺っております)。

なお、本件についてのTwitter上での反応は以下にまとめてられています。
http://togetter.com/li/877162

※この記事は、「カーリルのブログ」に9月21日に掲載された「日本十進分類法(NDC)のオープンデータ化に向けて」と、同月22日に加筆された追記分を合わせ、さらに「呼びかけ文」の内容を転載して「マガジン航」編集部にて再編集したものです。

執筆者紹介

吉本龍司
1982年、岐阜県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。フリーソフトウェアやシェアウェアなどを開発するかたわら、企業や行政の情報システムの構築や、様々なWebサービスの立ち上げに関わる。2010年、全国の図書館をまとめて検索できるウェブサービス「カーリル」を立ち上げる。同サービスを運営する株式会社カーリル代表取締役を務める。