グーグルとBook on Demandが提携

2009年9月18日
posted by 仲俣暁生

Book On Demand社は9月17日、グーグル・ブックスにアーカイブされている著作権切れコンテンツに対し、同社の開発したオンデマンド印刷製本機「エスプレッソ・ブック・マシーン」からアクセスできるようになったことを発表した

この映像はその発表をうけてYouTubeに公開されたもので、Google Book Teamのプロダクト・マネージャーであるブランデン・バジャーと、On Demand BooksのCEO、デイン・ネラーが登場し、Book On Demand社のオンデマンド出版システムのデモンストレーションを行っている。Googleとの提携を前提に、Googleで閲覧可能なパブリック・ドメイン作品(著作権保護期間を過ぎた作品)のことが語られているが、もちろん、Google以外のネット上の書籍コンテンツに対しても同様のことが可能であると思われる。

バジャーによれば、「Google Bookのゴールは、出版された情報をよりユーザーが使えるようにする」ことだ。だが、ネット上で情報がとれたとしても、自分で書籍のかたちに印刷することは難しい。On Demand Booksが開発した「エスプレッソ・オンデマンド」という印刷システム(その印刷製本端末が「エスプレッソ・ブック・マシーン」)によって、図書館向けの品質をもつペーパーバックを、数分の内に1ページあたり1円にもならないコストで印刷が可能だと説明している。

ネラーによれば、このシステムは「本のATMのようなもの」である。印刷から製本にいたるプロセスは、1分あたり 125ページ想定で印刷可能(Xerox4112を使用)であり、ほぼ一冊3分から3.5分で完成する。このシステムの導入によって、書籍流通市場は革新的に分散化され、ごく小規模の書店から、どんな図書館あるいはユーザーも、必要な時に必要なだけ、必要な書籍を手にすることが可能になる、とネラーは主張している。

「できあがりは実物の本と同じですね?」とのバジャーの質問に対し、ネラーは「匂いも手触りも、まったく本そのものです」と答えている。

Book On Demand社は元ランダムハウスの編集者ジェイソン・エプスタインが創立したオンデマンド出版のベンチャー企業で、今年に入り、以前より小型化された「エスプレッソ・ブック・マシーン」の新バージョンを発表していた。上はそのときのプロモーション映像。

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執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。