目の見えない人への本

2009年12月5日
posted by ボイジャー

12月3日は国連で宣言された「国際障害者デー」となっています。日本でも、障害者の福祉と社会活動について意識を深めるため、この日から一週間が「障害者週間」となっています。これにちなみ、今回は普段とは少し異なった視点での本の紹介です。

ラビット社が発行する、視覚障害者向けのWordとExcelのテキスト。

ラビット社が発行する、視覚障害者向けのWordとExcelのテキスト。

これらはラビットという会社の本です。ラビット社は、IT技術を活用した視覚障碍者・もうろう者のかたの総合的な支援サポートをおこなっています。その一つに、視覚障碍者がパソコンを利用するためのテキスト本を出版するという活動もあります。

今回の2冊は、オフィス系ソフトの代表ともいえるWordとExcelについて、音声読み上げとキーボード操作によって作業をこなす方法を解説したテキスト本です。これらの本が作られた目的は2つ、視覚障碍者が自身で操作を学ぶためという他に、視覚障碍者へのサポートをおこなっている教育者、ボランティアにとってもサポート方法を学び実践していくための指針となる、という意味もあります。

タイトルの「スクリーンリーダー」という言葉、ご存知でしょうか? 視覚障碍者がパソコンを使う方法の一つに、画面に表示されている内容を音声変換し読み上げさせる、というものがあります。この音声読み上げを行うソフトが「スクリーンリーダー」です。代表的なものに高知システム開発の「PC-Talker」があります。

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「電子出版の未来を考える会議」レポート

2009年11月30日
posted by あきみち

最近、電子出版への流れは恐らく不可避だろう、と思うようになってきました。このレポートは、そう思うようになったキッカケを与えてくれた勉強会に関するものです。

先月の28日、「電子出版の未来を考える会議」(通称「でんのみ」)という勉強会が開催されました。飲み会と勘違いされやすい略称ではありますが、「でんのみ」は「”でん” 子出版 “のみ” 来を考える会議」という意味であり、えxぺというオンラインユニットの活動の一部として行いました。出版、新聞、金融、オンラインサービス、ライターなどを本職とされている方々で、電子出版に興味がある方々が集まりました。参加の呼びかけ等はTwitter上で行われ、互いにTwitter上で知り合った人々による会議と言えそうです。

「でんのみ」はクローズドな会議のつもりだったのですが、『マガジン航』の編集部からぜひレポートを書いてほしい、との依頼を勉強会後にいただいたので、「でんのみ」において私が「面白い」と思った内容だけを抽出して、まとめてみました。各出席者の方々は個人的な立場でいらしており、以下の話は、勉強会に参加された方々全体としてのコンセンサスではなく、所属する組織の公的な見解でもありませんのでご注意下さい(ただし、出稿に際して、参加者の方々の了承は事前に得ています)。

出版不況ではなく、衰退かもしれない

「でんのみ」の議論の中で「出版不況」に関する分析がありました。出席されていたのが主に出版関連業界の方々であったため、ここの部分で盛り上がりました。分析の中で、書籍全体の中でも特に雑誌が非常に大きく落ち込んでおり、さらに返品率がここ10数年で5%上昇していることや、1タイトルあたりの販売数が落ちていることが示されました。

さらに、話を進めて行くうちに「不況というのは好況があるから不況であり、今の状態は今後の好況が望めるような状態とは思えず、純粋な衰退かもしれない」という意見も出ました。確かに、現状のままであれば「紙」の本のかたちでの「出版」は単調減少を続ける衰退の道を進んでいるのかもしれないと思いました。

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マルチメディア創世記から25年

2009年11月26日
posted by ボブ・スタイン

20年前の今週、ロバート・ウィンターによるCDコンパニオン『ベートーベン第9交響曲』が出版された。このプロモーション・ビデオを見て、『ベートーベン第9交響曲』が640×400ピクセルの白黒ディスプレイを繋いだMacintoshに向けた作品だったことを知るのは大切だ。この作品を皮切りに、短かい期間ではあるが、1990年代の前半にはCD-ROMの黄金時代があった。そこで、この作品の誕生20周年を記念し、ボイジャーが過去に出版したCD-ROMのプロモーション・ビデオを、これから年末にかけて、順次公開していくことにする。

クライテリオン・コレクションの第一弾、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』

さらに1984年の感謝祭の直前、つまり25年前の今週には、(ボイジャーの前身である)クライテリオン社が創立されている。クライテリオン・コレクションの第一弾は、『市民ケーン』と『キング・コング』のレーザーディスク版だった。

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Kindle for PCを使ってみた(続)

2009年11月21日
posted by 仲俣暁生
プルダウンメニューで送付先を選択。

プルダウンメニューで送付先を選択。

前回の記事を読んだ読者から、アマゾンのキンドルショップから、電子書籍のサンプルデータをパソコン上のKindle for PCに送ることは可能では、というご指摘をいただきました。あらためてキンドルストアで手順を確認したところ、サンプルを送る際の送付先をプルダウンメニューで選べることが判明(右図を参照)。さっそくサンプルデータをいくつかKindle for PC宛てに送ってみました。

目についた本の無料のサンプルを落とし、「とりあえず自分がいま興味がある本」のライブラリーをつくっていく」という、前回のコラムで書いた「デジタル積ん読」がKindle for PC上でも可能というわけで、これは朗報です。

日本ではダウンロードが解禁されていませんが、すでにアメリカではキンドルストアで購入した電子書籍をiPhoneで読めるKindle for iPhoneが公開されています。また、アップルがiPhoneを大型化したようなタブレット型の端末を発売するのでは、という観測もあります。「Kindle for PC」「Kindle for iPhone」といったネーミングからも分かるとおり、キンドルは端末の名前であるだけでなく、アマゾンの電子書籍サービス・プラットフォームの全体をさす名称と考えた方がよさそうです。

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Kindle for PCを使ってみた

2009年11月20日
posted by 仲俣暁生

アマゾンがキンドル用のコンテンツをPCでも読めるアプリケーション、Kindle for PCのベータ版配布を開始したので、さっそく使い始めてみました。アプリケーションを立ち上げると、アマゾンで購入した電子書籍の一覧が並ぶはずなのですが、手元のキンドルに比べ、なんだか淋しい感じがします。そう、Kindle for PCではキンドルにダウンロードしたサンプル版が表示されないのです。

キンドル用の電子書籍の大半はかなりのページ数まで読めるサンプル・ファイルを提供しており、それらをどんどんダウンロードすることで、キンドルは一種の「立ち読みマシン」「積ん読マシン」としても非常に便利なのですが、現状のベータ版をみるかぎり、Kindle for PCはあくまでも「購入した電子書籍コンテンツ」を管理するシステムであり、本格的なビューアというわけではないようです。ためしにKindle for PCからキンドルストアのサイトにアクセスし、本を選んで「Send sample now」をクリックしてみたのですが、サンプル版はKindle for PCには蓄積されず、キンドル本体のほうに送られていました。(追記:下線部に関して、読者からの指摘で、プルダウンメニューで「Kindle for PCに配信」も選択できることが判明。ただしキンドル側のサンプルとは同期しません。詳細は次回のコラムにてご報告します)

実際、読書用ソフトとしては、Kindle for PCはたいした機能を持っていません。まだテキストの検索もできず、ノートやハイライトもつけられません(のちに実装されました)。たんに、ページをめくって前後に読み進むことぐらいしかできないのです。とはいえ、キンドルで読みかけの本をPC側で読むことや、PCで読みかけの本をキンドルで読むことも現実的にはあるはず。

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