サイトアイコン マガジン航[kɔː]

台湾の電子書籍プロジェクト「百年千書」

まずはこの映像をみてください(埋め込み映像が見られない方はこちらから)。これは台湾の台灣數位出版聯盟(=台湾電子出版連盟、TDPF)が9月末にサイトを公開した「百年千書」プロジェクトのコンセプトを伝えるものです。

「百年千書」は、過去150年間に台湾で出版された本のなかから、千冊を選んで電子書籍として公開するプロジェクトで、2010年から準備が進められていました。アヘン戦争が起きた1840年から1990年までの本が対象となっており、中国の著作だけでなく、欧米や日本の出版物からの翻訳書も数多く含まれています。

「百年千書」のウェブサイト。

集められた本はサイトでテーマ別・年代別などによって分類され、電子書籍として購入・閲覧できます。技術的にはHTML5とEPUB、そしてOPDS(Open Publication Distribution System)のもとで、クラウドコンピュータ上に置かれたコンテンツをウェブブラウザで閲覧する、いわゆる「Books in Browsers」の方式が採用されています。「百年千書」のサイトはまだ立ち上がったばかりで、ジャンルによっては本のタイトル数が少ないところもありますが、これから次第に充実していくことでしょう。

電子書籍で日本との交流も

台灣數位出版聯盟の理事長をつとめるのは、台湾最大手の出版メディア企業、城邦(CITE)グループのCEO何飛鵬氏。NPO法人アジアITビジネス研究会の「交流」2011年8月号に掲載された「台湾デジタルコンテンツビジネス事情〜電子書籍を中心に」(PDF)という記事で、何飛鵬氏が取材されています。この記事によると、台灣數位出版聯盟には出版社を中心に、エイサーやHTCといった電機メーカー、さらにはソフトウェア企業や通信企業など100社あまりが参加しているとのこと。また政府からの支援も得ていると何氏は発言しています。

今年11月には城邦グループと講談社が合弁会社「華雲数位股份有限公司」を設立することも発表され(上の映像は今年2月の記者発表時の映像)、電子書籍を通じて日本と台湾の出版界の交流は着実に進んでいます。

台湾といえば、電子書籍に欠かせない読書端末や電子ペーパーの世界的な生産国ですが、これからはハードのみならずソフトウェアの面でもこの分野をリードしていくことになるかもしれません。

■関連記事
台湾デジタルコンテンツビジネス事情〜電子書籍を中心に(NPO法人アジアITビジネス研究会「交流」)
EPUB3対応の「縦書き」読書ビューアシステム発表(ボイジャー)
ePUB 世界の標準と日本語の調和

執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。
モバイルバージョンを終了