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被災地に電子テキストを

3月11日に東北地方から関東地方を襲った「東日本大震災」の被害の実態が明らかになりつつあります。こうしたなか、未曾有の大災害にみまわれた被災地の救援や復興支援に役立つ書籍や専門雑誌のテキストを、インターネット上で無料公開する出版社や著者が相次いでいます。

最相葉月氏はこのテキストの無償公開を働きかけた理由を、同サイトで次のように語っています。

自分が何をすればよいのか、混乱のあまり躁状態となった頭を少しでも整理しようと、崩壊した書棚から崩れ落ちた一冊の本を読み返しました。阪神大震災で精神科救急にあたった医師や看護師らの地震発生から50日間の手記をまとめた、中井久夫編『1995年1月・神戸 「阪神大震災」下の精神科医たち』(1995年3月刊、みすず書房)です。

援助者もまた被災者であるときに何が起こるのか、役割分担はどうするのか、ボランティアには何が期待されているのか、医薬品が足りないと患者に何が起こるのか、といった急性期ならでは逼迫した問題に、神戸大学医学部精神科とその応援に全国から集まった医師や看護師らがいかに対処したかが描かれています。

一気に読み終え、やはりこれはかけがえのない記録であるとその意義を再認識しました。そして、編者である中井久夫氏の手記「災害がほんとうに襲った時」を被災地で連日救援活動に当たられている医師や看護師、カウンセラーら病院関係者、その後方支援にあたられている方々、またこれから支援を考えておられる方々になんとか届けられないものだろうかと思いました。

大きな災害に見舞われたときには、迅速な情報提供も大事ですが、既存の書籍がもつ専門的な知見や過去の体験を、必要な人が参照できる仕組みも必要でしょう。

電子書籍というと、昨年はそのビジネスとしての可能性ばかりが話題になりましたが、こうしたかたちでの既刊書・雑誌の公開も、電子書籍が果たしうる大きな役割だと思います。

[追記]
上記記事を書いた後に、電子書籍(ウェブ版含む)の無償ダウンロード、無償アクセスの例が他にもあることをお知らせいただいたので、あわせて紹介します。(2011年5月20日更新)

※他にもこうした試みをしている出版社があれば、随時リンクを拡充していきます。

■被災者救援・復興に役立つ電子テキスト、電子書籍等の無料公開をしているサイト一覧
医学書院/震災関連記事 無料公開(医学書院)【無償期間終了】
災害からの復旧・復興関連資料(学芸出版社)
東北関東大震災下で働く医療関係者の皆様へ――阪神大震災のとき精神科医は何を考え、どのように行動したか(最相葉月さんの個人サイト)
今日の診療 WEB版 法人サービス(医学書院)【無償期間終了】
Medical e-hon(トーハン)【無償期間終了】
「家庭の医学」(エムディーアイ)【無償期間終了】
東日本大震災エイド 復興支援フリーアクセス論文(PierOnline)【無償期間終了】
「Q&A災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規出版)【無償期間終了】
震災および原発事故関連書籍ページ(化学同人)【無償期間終了】
東日本大震災関連のお知らせ(岩波書店)
『日本の原子力施設全データ』(北村行孝・三島勇著 講談社ブルーバックス2001年刊)一部公開のお知らせ(講談社)【無償期間終了】
地震・津波、放射線、心理学分野の書籍・本文無償公開(丸善出版)
「災害に強いまちづくり―企業・産業・地域の減災にむけて」(グラベルロード)
「もっとわかる放射能・放射線」(北海道大学CoSTEP)【無償期間終了】
「被災された方々,子どもたちの心のケアについて」無料公開特別サイト(有斐閣)
『阪神・淡路大震災における避難所の研究』(大阪大学出版会)【無償期間終了】
災害復興関連書籍の無償公開のお知らせ(明石書店)【無償期間終了】
『地震の時の料理ワザ』 デジタル書籍版(柴田書店)【無償期間終了】

 

執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。
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