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キンドルで読書体験の共有が可能に

以前、藤井あやさんが「キンドル萌漫」で紹介してくれた、キンドル・ファームウェアのバージョン2.5へのアップデートがついに開始されたようです。うちのキンドルにも、昨日の午後に自動的にインストールされており、さっそくいろいろ試してみました。

キンドルストアから購入した電子書籍や、自分のパソコンからインストールしたPDFファイルがフォルダで管理できるようになったことや、PDF を拡大表示できるようになったことも大きいですが、今回のアップデートの最大のポイントは、読書中の本のハイライト箇所をネット上で共有したり、ツイッターで呟いたりできる、「読書体験の共有」機能でしょう。

[menu]>[setting]で連動するソーシャルネットワークを選択できる

現状では英語でしか書き込めませんが、この機能を使えば、本を読み進めながら、気に入ったフレーズに対するコメントをツイッター上でリアルタイムにつぶやいたり、同じ本を読み進めている人の感想を知ることができるなど、ゆるやかな「読書会」がネット上で可能になります。

読書体験がシェアされる時代

今回アマゾンがキンドルで採用したサービスは、川添歩さんの「読書体験のクラウド化」という投稿にあったアイデアによく似ています。川添さんはこのときの投稿で以下の用に書いています。

このことから、次の未来が見えてきます。現時点では、「自分の本」たらしめている自分の書き込んだデータは、自分自身だけが参照するものです。自分の読書は、自分だけに閉じられた体験です。その「自分だけのデータ」を公開できる機能が、いずれ登場するでしょう。それは、メタファーではない、文字通りの「ソーシャルブックマーク」です。読書体験の共有化です。

自分が読んだ本を、ほかの人がどのように読んだのか、どこに線をひいたのか、それが分かるようになる のです。

これらは今回のキンドルのアップデートで、英語に限れば実現しています。

7人の読者が、この箇所にハイライト(下線)を引いている。

実際にどんな感じになるのか、ロバート・ダーントンの「The Case for Books」でためしてみました。本を前から順に読み進めていくと、こんな箇所に行き当たりました。自分ではハイライトを引いた覚えのない箇所ですが、他の7人の読者がここを重要と判断し、ハイライトを引いたことがわかります。

このように、他の読者によってどの箇所にハイライトが引かれているかということは、キンドル端末の中でも表示できますし、ネット上のキンドルストアでも確認が可能です。

もっとも多くハイライトされている箇所が一覧でき、そのロケーションへと飛ぶこともできる。

「読書体験の共有化」はキンドルの専用端末だけでなく、iPad/iPhone用のアプリケーション、Kindle for iPad/iPhoneでも可能です。キンドルがたんなる読書用端末の名前ではなく、本の購入から読書体験の共有にいたるプラットフォームであることが、今回のアップデートでより明らかになりました。これらの画期的なサービスが、一刻もはやく日本語の電子書籍でも利用可能になることを願わずにはいられません。

※当初の原稿ではキンドルOSと表現していましたが、正確を期すためファームウェアという表現に訂正しました。

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執筆者紹介

仲俣暁生
フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。
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