先週末、ボイジャーにiPadが到着しました。以前のキンドル到着時と同様、箱の開封段階から、さっそく映像でお送りします。
気になるiBooksの書棚には、A.A.ミルンの『クマのプーさん』(英語版)があらかじめインストールされていますが、試みに青空文庫から落とした芥川龍之介の「本所両国」を、XHTMLからePubに変換してiBooksで表示してみたところ、横書きながらも、ルビもふくめ日本語が表示されました。
またiPadはタテ表示の状態でウェブブラウザとして使うときわめて快適。『マガジン航』を読むにもうってつけです。
キンドルなどのディスプレイに利用されているe-inkによる電子ペーパーに比べ、iPadのディスプレイは明るくて読書には向かない、という話題がありますが、ボイジャーのプログラマである祝田久さんは、この問題について次のような感想を述べています。
おそらくそれは、iPadのディスプレイは「映像用」のダイナミックレンジに合わせてあるので、そのまま使っていると、本のページは必要以上に明るくなっている、ということだと考えます。 「店頭デモ設定」画質のテレビのようなものです。
本の白いページに合わせてディスプレイの明るさを調整すると写真や動画などの「映像」は沈んで精彩を欠き、映像に合わせて調整すると本のページが眩しくなる。「映像用プロファイル」と「紙面用プロファイル」 というディスプレイを占有しようとする、基準のことなる二つの世界があって、PC/Macの世界では、ほとんど無視されていた問題が、iPadではその違いがなぜか気になり、見過ごせなくなっているのではないでしょうか。
iBooksをはじめ Kindle for iPadやKobo HDなど代表的なブックリーダーを眺めてみると、 どのリーダーも独自にページの明るさを調整する機能を搭載しており、バックライトの明るさはそのままに、ページの背景色をコントロールして見かけ上の照度を下げる工夫をしています。
これは、横並びのスペック競争の結果ではなく(まだ互いに知らない)、共時性とでも言いたくなる現象ですが、開発者自信が実際に使っていてページが眩しいと身を持って感じたからではないでしょうか。
「ディスプレイ装置」部分だけを見れば iPad と PC/Macでは何の違いもないはずなのになぜかこだわってしまう、それが iPadの魅力なのかもしれません。
おりしもiPhoneOS4の概要が発表され、今夏のアップデートではiPhoneにもiBooksのアプリが使用可能になるとのこと。電子書籍端末をめぐる争いは、iPad/iPhoneの参入でいっそう激しくなりそうです。
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執筆者紹介
- フリー編集者、文筆家。「シティロード」「ワイアード日本版(1994年創刊の第一期)」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、2009年にボイジャーと「本と出版の未来」を取材し報告するウェブ雑誌「マガジン航」を創刊。2015年より編集発行人となる。著書『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、共編著『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)、『編集進化論』(フィルムアート社)ほか。
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