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TIBF2009 松井進氏講演録

― イントロ 鎌田純子(ボイジャー) ―

皆様の中には今日初めてバリアフリーの読書ということを考えた方もいらっしゃると思います。

「読書」とは何だろうか。大きくいえば自分の体験していないことを本から体験する、色々な人生を仮に体験して豊かにする、そういったことができることだと思います。またそれは目が見える、見えないとか、例えば足が悪いとか入院しているとか、ということではなくてできること、大事な、私達が生活する上での文化としての権利なんじゃないかと思います。

実は来年は国民読書年といわれています。これは皆が読書するんだということが公の場から発表されているものです。その中にバリアフリー、読書にとってもバリアをなくしていこうという動きがあります。

今日は、盲導犬と一緒に来ていただきました、バリアーフリー資料リソースセンターの副理事長でいらっしゃる松井進さんのほうから、「誰でも読書~電子本の読上げが拓く視覚障害者の読書~」というテーマで、具体的な読上げの方法なども含めてお話をいただきたいと思っております。では、よろしくお願いいたします。

みなさんこんにちは。松井進と申します。私の下にロミオという盲導犬が、寝転がっておりますが下におります。

今日は電子本を使った読書ということについて、お話をさせていただきたいと思います。目が悪い人と電子本はあまり関係がなさそうとイメージされるのではないかと思うのですが、そんな読書の話題を今日は約30分お話ししたいと思いますので、みなさんおつきあいをいただければと思います。

視覚障害者の文字=点字というふうに皆さん思われがちだと思いますが、実をいうと視覚障害者の中で点字を使っている人の割合というのはせいぜい一割、10パーセントから12パーセントといわれています。

では、他の視覚障害者はどのように本を読んでいるのか。いちばん多いのが、点字を使える人であっても使っている方法なのですが、録音の図書を聞いているパターン。また、大きな活字「大活字」を読んでいるパターン。あとは、実際に図書館で行っているサービスで、目の見えるボランティアさん、「音訳者」というふうに呼んでおりますけども、本を読んで下さる方と一緒に本を代読していただく「対面朗読サービス」。

そしてOCR。皆さんの中でOCRというと、データをテキスト化するための道具というふうにお考えられがちだと思いますが、視覚障害者にとってはテキスト化しただけではそのままでは使えないのでそれを合成音声で読上げてくれる装置まで発展しています。

視覚障害者で困ることは、こういう文字処理のことが大きいわけです。大きく分けて困ることが3つあるといわれています。

文字を読んだり、書いたり、歩いたり、「文字・書き・移動」というふうにいいますが、人間の外界からの情報の約80パーセントから90パーセントは目を通して得ているというふうにいわれており、視覚障害者は別名「情報障害者」ともいわれています。

その8割なり9割なりの情報、阻害されている情報をどのように得るかということが、今日のテーマにもなり、「読書」ということにもつながってまいります。情報障害を克服するために、例えば周囲の音、におい、そして触る、触覚ですね、体感、この8割の部分をいかに補うかということを考えているというわけです。

一番端的に使われているのが「聴覚」、耳で聞いて感じる感覚です。次に「におい」、「味覚」、これは見えても見えなくてもそれほど変わらないと思いますが。私みたいに食べるのが好きだとこのように太ってしまうということはあると思います。

「触覚」。点字なんかはまさに触覚で感じる文字です。触覚イコール手で触るだけという風に考えられがちですが、どちらかというと体感、体全体を使って、例えば足の裏で道の様子を感じたり、風の流れを感じたり、太陽の暖かさを感じたり、そういったことで体全体を使って。特に頬なんかは風の動き、太陽の暖かさ、そういった皮膚感覚というもので周囲の様子を感じたり、また額にも新たな、額に三つ目がとおるの写楽くんみたいに目があるわけじゃないんですが、バランス感覚とか気配とか様子とかそういった意味で感じる働きをするといわれています

続きはこちら:http://www.voyager.co.jp/sokuho/img_tibf_report/tibf09_matsui.html

執筆者紹介

「マガジン航」編集部
2009年10月に、株式会社ボイジャーを発行元として創刊。2015年からはアカデミック・リソース・ガイド株式会社からも発行支援をいただきあらたなスタートを切りました。2018年11月より下北沢オープンソースCafe内に「編集部」を開設。ウェブやモバイル、電子書籍等の普及を背景にメディア環境が激変するなか、本と人と社会の関係をめぐる良質な議論の場となることを目指します。
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