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スウェーデン作家協会のオンデマンド出版サービス

村上龍氏が電子書籍の制作会社G2010をITベンチャーと共同で設立したというニュースを、いつものようにTwitterのTL上で最初に目にした。一年前、スウェーデン作家協会が会員作家のために、廃刊や絶版になった本のオンデマンド出版サービスDejavubok.seを始めたことをそれで思い出した。どちらも作家自身が直接出版に関わり始めたという点で共通している。その後、作家協会のそのサービスはどうなっているのだろうか?興味を惹かれたので早速、作家協会の会長に直接電話を入れてみた。

作家協会の会長からこのサービスの担当者としてAnna Forslundを紹介された。連絡先住所が作家協会の事務所とは別のところになっているので調べてみたら、電子書籍の制作会社Publit.seのオフィスだった。

スウェーデン作家協会 Swedish Writer´s Unionのオンデマンド出版サービス Dejavubok.seの担当者Anna Forslund氏。

Pubit.seのサイトはスウェーデン語だが、Googleツールバーで英語に翻訳すれば読める。

Publit.seが設立されるきっかけとなったのは、2008年に亡くなったスウェーデン人作家Stig Claessonの作品を、Publitの創設者たちがブックサークルで読むことになった時、80以上の作品が残されているにもかかわらず出版されたのはわずか5作品だったことから、需要の少ない本のシリーズ出版を手掛ける会社を作ろうという話になったことだという。それがやがて、出版社や会社がオンデマンドで出版できるサービスを提供するPublit.seの設立につながった。

廃刊や絶版になった作品を再出版したいと希望する作家協会の作家会員や翻訳者のために、紙の本をスキャンしてデジタル化したり、データファイルのフォーマットを変更したりといったサービスがここで結びつくことになる。

Publit.seの社長、Per Helin氏。

四人の創設者の一人であるHannes  Eder氏。スウェーデンでは未発売であるiPadを手に。ScrollMotionのIcebergリーダーでPublitが制作した本がiPhone/iPadでも読める。

インタビューで聞いたDejavubok.seの話を箇条書きにしてみた。

ただし、作家協会のサービスとしては、新しい本のオンデマンド出版はしておらず、あくまで廃刊/絶版になった本の再出版の手助けをしており、出版社と競合するサービスではないと強調していた。実際このプロジェクトは、最近話題になっているスウェーデン国王についての本を出したLind社、ペーパーバック出版のPocketförlaget、起業家によって設立されたTukan Förlagという元気な顔ぶれの3社と共同で始められている。

この他、PublitがSödertörn大学と協力して、スウェーデン独自の読書用端末の開発や紙の本をXMLフォーマットに自動変換する技術などに取り組んでいること、また近い将来Google EditionやAmazonのサービスがスウェーデンでも提供されるようになった時を視野に入れて仕事を進めているということだった。

また首都圏を中心にしたペーパーバック販売チェーンPocket Shopのオーナー、Mathias Engdahl氏が2009年にPublitの主要株主(50%)になっている。ここでは作家や販売店がITベンチャーと組んだ格好だ。新しい出版の可能性を求める作家、フットワークの軽い中小の出版社、進取の気性に富む販売店がITベンチャーの技術面のサポートを得て、読者が本を手に入れやすい環境を作る新しいネットワークができつつあるように感じた。

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