最近、ソーシャルリーディングという言葉を目にする機会が多いですな。
正直「ソーシャルリーディング」が一体何なんだかよくわかっていないんですが、「読書体験の共有」によってコミュニティを形作るのがなんだか面白そうだしお金にもなりそうってなことのようでございまして。
Amazonの電子書籍端末kindleにもポピュラーハイライトという、ユーザーがひいたアンダーラインを共有できる機能があるそうでございますし、他にも既に複数のウェブサービスが存在します。この文章を書いているのは2010年8月11日なんですけれど、日本初のサービスでもQlippyというものが開始したそうですし。
その他にも読書関連サービス、例えば私が使っているのは読書メーターですが、読み終わった本にコメントを付けることができ、気に入ったコメントには星をつけたりできるわけで、これもソーシャルリーディングっぽい香りがしますです。作家の円城塔さんのコメントなんか、短くて鋭くて面白いですよ。
ニコニコ動画のコメント機能との類似
さて、そんなこんなで電子書籍が話題になるのと同期するようにちらほらと話題になり始めたソーシャルリーディングですが、ソーシャルリーディング関係の記事につけられたソーシャルブックマーク……なんかややこしいな……のコメントを見てみますと、お馴染みニコニコ動画のコメント機能を連想する方も多いようで、私なんかもそのクチであります。おお、動画投稿サイト。おお、電子電子。
これからの電子書籍時代を生きるヘッズたちのキーワードはソーシャルリーディングでクラウド化でモバゲーでappでフリーミアムでiPadでkindleして京都アニメーションですよ。これは流行る。
ご存じのとおり、ニコニコ動画の特徴は、コメントで疑似的なライブ感を味わえるところですよね。黒字化も達成し、権利者による公式配信も増え、順風満帆なニコニコ動画でございますが、違法に投稿された動画と権利者とのイタチごっこは依然として続いているわけでして。
そんな戦いの場となったコンテンツのひとつに「さよなら絶望放送」というラジオコンテンツがございます。アニメイトTVで配信されているウェブラジオでして、アニメ「さよなら絶望先生」と連動したラジオです。原作のコミック、大好きですとも。
このラジオが大人気だそうでして。ニコニコ動画にも違法にアップされたのですが、違法ですので権利者の要請で当然消されるわけです。
そんなことを何度も何度も繰り返した結果、ユーザーはどんな方法を編み出したでしょうか? それは、ユーザーの間でszbh方式と呼ばれる方法でありました。詳しい解説はこちらをどうぞ。つまり、鑑賞の対象となるラジオ番組そのもの・コンテンツを全く含まない、コメント専用の動画、皆で連動しコミュニティを形成するためだけの場を自分たちで用意したのです。
ニコニコ動画のヘビーユーザー、いわゆるニコ厨にはすっかりお馴染みのszbh方式ですが、この現象にソーシャルリーディングの光を当てると面白いことに思い当ります。そうです。別にコンテンツの電子化は必須じゃないんですよ。
紙の本での読書もソーシャル化は可能
先に読書メーターのコメント機能について触れましたが、もちろん読書メーターは電子書籍を対象にしたものではありません(将来的にはわかりませんが)。同じようにSNS的な読書関連サービスは他にも複数存在しています。
技術的なことはもうからっきしなんですが、ある本のある部分……何ページ目とか、何ページの何行目とか……に対してコメントを付ける、という機能は実現不可能でしょうか。そんなことはない気がします。
いま現在、多くの人が電子書籍の夢を語っています。そしてそういった人たちの多くはソーシャルリーディングの夢も一緒に語っています。だから私たちはついつい錯覚してしまいます。「ああ、電子書籍のユートピアではソーシャルリーディングが実現するんだ」
違います、違います。もちろんそれは別の夢なのです。確かに電子書籍とソーシャルリーディングは相性がいいのでしょう。それでもそれぞれ別の夢なのです。あなたが本屋で手に取ったその本について、あなたが枕の横に積み上げているその本について、ネット上でコミュニティを形成できるんです。
ニコニコ動画では多くの再生数を集めたり、多くのマイリスト数(「お気に入りに登録」みたいなものですね。念のため)、多くのコメント数を集めた動画はランキングの上位にランクインし、多くのユーザーが注目します。それなら、本についてのコミュニティの動きの活発さが可視化されたならば、注目を集めない道理があるでしょうか?
「口コミ」が「ネットでの口コミ」になり、さらにそれが「可視化されたコミュニティの活発さ」になっていくのです。そしてそれらのコミュニティ群は、電子書籍だけではなく全ての書籍に開かれたものになり得るんです。ソーシャルリーディングなんていう面白そうなものを、電子書籍なんぞに独占させてはいけません。
そんな未来を、私は夢見ています。
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